早く
「あぁーあ」
グラスの底に残った小さな氷を口の中で噛み砕く
歯と顎に響く衝撃
口の中に散るかけら
冷たかったそれは
すぐに消えてしまって
『メイルちゃんこないねー』
クーラーの効いた喫茶店
オーダーした飲み物はすでに飲みきった後で
特にすることも無くぼんやりと斜め上を見上げる
目の前のビルの上の広告モニターには
握手をしているおじさんと少年
眩しいフラッシュの中でおじさんも少年もにこにこにこにこ・・・
頭の奥がみしりと音を立てたような気がした
そういえばもう3分以上この体勢を続けている
そのせいでじわじわと鈍い痛みが首にたまっていく
「あぁーあ」
思わず口からこぼれるやる気の無いような声
『どうしたの熱斗くんさっきから』
一緒になってモニターを見上げていたロックマンが
くるりと顔をこちらに向ける
「アイツさ」
一週間ぶりに見るその姿は
「絶対疲れてるよな〜」
首が痛いけど目をそらせない
高いところにいる炎山
道を行く人々が時々見上げている
巨大なモニターの中の炎山
『そうかな? ボクには全然わからないんだけど』
グラスの横に腰掛けたロックマンが
つまらなそうに相槌をうつ
「だってなんか一週間前と違うじゃん うまく言えないけど」
モニターが製品紹介のCMに切り替わる
「あー首痛いー」
少しマッサージしながらメニューを開く
もちろん飲み物のお代わりをオーダーする為だ
「何のもうかなぁ〜 トロピカルマンゴーとかうまそう!」
『熱斗くん 冷たい物ばっかり飲んでおなか壊しても知らないよ?』
いつものとおり小言を言うロックマンに文句を言おうと
顔を近づけると関節がパキポキと音を立てる
仕方なくぐるぐると首を回していると
「ごめ〜ん 遅くなって!!」
息を切らしたメイルちゃんが目の前の座席に手をついた
まるでずっと見ていたかのようにタイミングよく現れた店員に
アイスコーヒーとトロピカルマンゴーをオーダーすると
メイルちゃんはかぶっていた帽子でぱたぱたと顔をあおいだ
「別にいいよ オレが宿題教えてって頼んだんだから」
笑ってメイルちゃんの方を見て
(あ・・・・)
「どうしたの熱斗?」
視界の端でメイルちゃんが身体を捻る
俺の目の先にはモニター
さっきと同じ映像
「あぁ 炎山くんかぁ」
やっぱりアイツ疲れてるよ
「なんか大企業と提携した製品が
なんとかデザイン賞受賞したんでしょ?」
顔色だってこないだ会ったときより悪い気がする
笑顔にも元気がない気がする
目の下にある隈もちゃんと消せてないし
アイツいっつもいっつもギリギリまで何にも言わねーし
倒れるまで動き続けるし
倒れても働こうとするし・・・
「うわっ」
一瞬何が起こったのかわからなかった
目をぱちくりと瞬くと
すぐ前にメイルちゃんの手
どうやら顔の前で手を打たれたらしい
「な・・・何?」
「炎山君がきになる?」
「・・・へ?」
聞き返すオレに
メイルちゃんはずずいっと顔を近づけてくる
「疲れてるかもって?」
「あ・・・」
そうなんだよ!
言おうとしたらメイルちゃんの顔がすっと遠ざかっていく
『って熱斗くんは言うんだけどさ メイルちゃんわかる?』
「ぜ〜んぜんっ」
なんだかオレがおかしいみたいな言われようだ
「え〜 見ればわかるじゃん」
抗議の声を上げるオレにメイルちゃんはにやりと口の端を持ち上げた
「つまりは熱斗が炎山くんのほんの些細な変化にも気づけちゃう程
あの人の事大好きだって事でしょ?」
「んなっ」
言葉を詰まらせたオレにロックマンがため息をつく
『ノロケだって事に気づいてないんだもんなぁ 熱斗くん』
「ちがっ そんなんじゃっ・・・」
否定するオレを無視してメイルちゃんもため息をつく
「一番性質悪いわよね〜」
「だからぁっ!!」
「『ね〜』」
今度はオレが大きくため息をついた
「あぁ もう・・・」
この二人には敵わない
何故だかそれを思い知らされた気がする
(お前のせいだ バ〜カ)
見上げたモニターでは今もなおアイツの笑顔があって・・・
そういえば
確か今日は夕方科学省に来るって言ってたっけ
「肩でももんでやるかな・・・」
呟いたオレに
メイルちゃんとロックマンが顔を見合わせる
「な・・・なんだよっっ」
あわてて声をかけた俺に
「『別に?』」
しょうがないなぁって感じの笑顔で笑った
あぁ くそうっ
恥ずかしいなぁ もう
でも・・・ はぁ
認めるよ
オレは炎山の事大好きだから
疲れてるみたいなのがすごく心配で気になるし
今日これから会えるって事すごく嬉しいし楽しみだ
あぁもう 本当・・・
早く会いたいよ
炎山
FIN
*後書き*
44000Hit 咲夜様
リクエスト内容:炎熱小説
大変お待たせいたしました(汗
炎山の事大好きな熱斗くん
も 好きです。。。
そして黒いロックマンとメイルさんも(笑
炎熱小説なのに炎山が出てなくてごめんなさい(><
キリリク有り難う御座いましたvvVV
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